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「稔麿が三津さんを危ない目に
「稔麿が三津さんを危ない目に遭わせたくないって言うのがよく分かった。 責任感じちょるんやろなぁ稔麿。」 「ですよねぇ。もういいのに。こうやって生きてるんやし。」 「いやぁそりゃ一生あいつの中に残るやろ。好きな女子をそんな目に遭わせたんやけ。」 三津がしゅんとしてしまったのに気付いて言葉を続けた。 「でも三津さんが気にする事やない。それは稔麿が戒めとして背負ってくもんや。 三津さんは稔麿を救ったんやけ胸張ったらええそ。 稔麿は二度と同じ事せんように自分に刻み込むだけじゃ。」高杉から解放された三津はサヤから仕事をもらい,部屋で針仕事に勤しんだ。 「クソ親父……いつか覚えてろ……。」 乃美にがっつり説教を食らった高杉はよろよろと三津を探して彷徨いた。 「お嬢ちゃん三津さん知らん?」 洗濯物を取り込もうとしているアヤメを捕まえた。 「三津さん?さぁ……夕餉の仕込みの時刻になればまた出て来はりますよ。」 本当はどこに居るか知ってるがサヤに口止めされている。仮部屋の場所もまだ秘密だ。 「何や口止めされとんか。まぁいい。夕刻まで待つか。」 大きな欠伸と伸びを一つ。その姿をじぃーっと見つめてアヤメは首を傾げた。 「何でそんなに三津さん追い回してるんです?」 「何で……。何でやろな?何か気になるんや。【植髮分享】如何提高植髮成功率? - 」 高杉もアヤメと向かい合って同じ方向に首を傾げた。 「えっそれって恋ですか!?三津さん好きになっちゃったんですか!?」 「恋?……これ恋か!?俺は三津さんに惚れてしまったんか!?」 高杉はアヤメの両肩を掴むと前後にがくがく揺らした。 「だって気になるし目の届くところに居てないと落ち着かないんちゃいます?」 高杉は激しく頷いた。 「それ恋ですよ!えっどうします?三津さんと桂様は相思相愛ですよ?」 「そんなの関係ない!祝言まだやろ?まだ間に合う!」 「馬鹿も休み休みに言え。」 高杉の頭に強烈な手刀が見舞われた。 「いってぇ!!何すんだ!!九一!!」 高杉は思いきり振り返って背後に立つ入江に食ってかかった。 「お前は誰にも相手にされんけぇかまってくれる三津さんに甘えちょるだけやろが。 そんなに有り余ってんなら島原でも行って来い。」 そう言って入江は廊下の奥に姿を消す。向かうのは三津がいるであろうあの部屋。 「三津さん。」 小声で呼び掛ければそっと戸が開いた。 「隠れてるんですね。」 ふっと笑ってするりと戸の隙間から中に入り込んだ。 「サヤさんのお気遣いです。」 この部屋がバレるのも時間の問題だけどと笑って針仕事に戻った。 「実際会ってみてどうですか?晋作は。会ってみたいと言ったの後悔しました?」 入江はにやにや笑いながら三津の傍らに腰を下ろした。 「勢いが凄いですね。」 でも会えて良かったと答えた。「勢いしかない。」 「そんな事はないですよ?決断が早いだけでちゃんと考えてはりますよ。多分。」 「おや,晋作を褒めるんですか。」 目元を綻ばせながら手を動かす三津をわざとらしく驚いた顔で見つめた。 お世辞だとしてもちょっと気に食わない。 「褒めるというか率直な感想? びっくりするぐらい迷いがないって思いました。」 「だから考えてないんですよ。思った事はすぐ口にして考えるより体が動く。」 三津くすくす笑ってそっかぁと呟いた。 「三津さんから見た私はどんな男です?」 「ん?入江さん?」 ぱっと顔を上げた三津と視線がぶつかった。久坂はいつの間にか兄という地位を確立している。 では私は?と答えを催促する。 「入江さんは先生ですね。」 「やっぱりか。三津さんにとって私はお国言葉の人ですか?男として寂しいなぁ。」 「お国言葉だけやなくて色々教えてくれたやないですか! それに入江さんにしか話されへん事もあるんで。」 寂しいなんて言わないでと眉を八の字にした。 「じゃあもう少し……。二人だけの秘密増やしませんか?」 秘密を増やす?何の為?入江の意図が見えなくてきょとんとした。 視線の先の入江はただ口角を釣り上げている。